南極観測隊の犬といえば、樺太犬の「タロ」と「ジロ」が有名ですね。厳しい自然環境の南極に取り残されながらも、約1年もの間生き延びたこの2頭をモデルにした映画『南極物語』は、ご覧になった方も多いのではないでしょうか。タロとジロの物語は日本中を感動の渦に巻き込みました。 この記事では、そんな南極観測隊のメンバーとして活躍した樺太犬の体に隠された秘密をご紹介します。
南極観測隊でそりを引く樺太犬の体の秘密
ここから、南極でも活躍できる樺太犬の体の秘密について解説していきます。
1) 極寒の南極でも平気な樺太犬の毛皮の秘密
南極観測隊に同行した犬は、そのほとんどが樺太犬です。
1910年、日本初の南極探検隊である「白瀬隊」が極地での探索の為、生まれつき寒さに強い樺太犬を集め、犬ぞり用の犬として同行させたのが最初といわれています。
樺太犬は長毛種と短毛種がおり、被毛は2重構造(ダブルコート)で、上毛は太く硬い剛毛で雪などの水分を弾くことができ、下毛は細く軟らかい綿毛が密に生えていて保温性優れていました。
このように寒さに極めて強い毛皮を持っていたため、かつては樺太犬の毛皮が人間の防寒服や手袋などに使われることもあったようです。
樺太犬の毛色は黒色、茶色、グレー、白色などがあり、ブチの柄もいたようです。
2) 樺太犬の驚くべき嗅覚と聴覚の秘密
樺太犬は嗅覚や聴覚も非常に優れており、もともとアイヌ(樺太や千島列島)で狩猟犬としても活躍していました。 南極大陸では目も開けていられないほどの激しいブリザードが襲いかかることがありますが、樺太犬の嗅覚や聴覚は、その中でも仲間の匂いを嗅ぎつけ、声を聞き分けることができます。 吹雪で視界が遮られても、目的の場所までそりを引くことができるのは、この優れた嗅覚と聴力のためです。
3) そりを引くのに適した体型
樺太犬は成犬では体長約60~70㎝、体高約50~60㎝後半とされており、体重が30~40kg、胸幅が広く、がっしりと太い肢で重心が低く、とてもそりを引くのに適した体をしていたようです。 第1次観測隊が樺太犬を連れていくことが決まった後、当時の大学教授や観測隊員によって、約1000頭の樺太犬の中から南極での暮らしに耐えられるよう健康で、そりを引く牽引力に優れた20頭が厳選されたそうです。
4) 厳しい環境でも耐えられる体質
樺太犬はもともと寒い地方(樺太や千島列島)で改良された犬種で、生まれつき寒さに強い犬種でした。
それは、極寒のなか、-40℃の雪上でも平気で暮らせるほどだったとか。
また、粗食によく耐え、資源の限られた南極の厳しい環境でも飼育しやすかったというのも樺太犬が選ばれた理由の一つとして挙げられます。
ちなみに、暑さにはめっぽう弱かったようで、気温10℃以上の環境では、食欲がなくなって体重が減ってしまうようなこともあったようです。
樺太犬は厳しい環境でも生きられる体を持っている
南極観測隊の犬たちは、氷点下が続く極寒のなか、硬い氷の上でそりを引き続けることができます。樺太犬が、寒さに強い被毛構造や、鋭い嗅覚と聴覚、厳しい環境でも生きていける丈夫な体を持っていたからこそ、南極での過酷な活動が可能だったということがお分かりいただけたかと思います。 『南極物語』のモデルとなったタロとジロが、南極で約1年もの間生き延びることができたのは、このような特長を持っていたのが大きな要因かもしれませんね。