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  • ごはん
  • 2025/06/30

獣医師が教える犬が「マスカット」を食べたときの症状と応急処置

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夏に旬を迎えるマスカット。 愛犬にも少しあげたいなと考える方もいるでしょう。 しかし、実際は犬にとって命を脅かす危険な果物です。 この記事では、愛犬にマスカットをあげてはいけない理由から、摂取してしまった場合の中毒症状や対処法、他に与えてもいい果物の紹介まで詳しく説明します。 ご家族が正しい知識を把握してあげることで、愛犬の健康を守りましょう。

この記事の監修

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「マスカット」を食べてしまったら命にかかわるの?

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人にとっては安全なマスカットでも、犬にとっては命に関わる危険性があります。 マスカットはブドウの一種で、中毒を引き起こす可能性があるからです。 わずかな摂取でも急性腎不全により命に関わるリスクがあるとされています。

関連記事:犬にぶどうは絶対にダメ!理由や食べてしまった時の対処法



もし「マスカット」を食べてしまったらどんな症状がでるの?危険な症状とは?

マスカットを食べてしまった場合、注意すべきは急性腎不全の症状です。

代表的な症状として、嘔吐、食欲不振、重症になるとけいれんや意識障害、乏尿(尿の量が極端に減ること)などが報告されています。

3kgの小型犬が7粒程度のマスカットを食べたことで、数時間後に嘔吐し、最終的に死亡したという報告もあり、少量でも油断は禁物です。


出典:ブドウ摂取後に急性腎不全を発症して死亡した犬の1 例



危険な症状の場合の応急処置

緊急性の高い症状が見られた場合、すぐに動物病院へ連絡し受診することが最も重要です。

嘔吐や震え、ぐったりしているなど明らかな症状がある場合は、急性腎不全に陥っている可能性があります。

犬が食べた時間と量・様子をメモや動画・写真で記録して、早めに動物病院へ向かいましょう。


軽度な症状は?

軽度な場合の症状としては、元気や食欲がいつも通りで大きな異変がない場合や、わずかな嘔吐や軟便などの消化器症状、一時的に元気が無くなるなどがあります。

一見問題がなさそうにも見えますが、症状が遅れて現れるケースもあるため、油断できません。


軽度な症状の場合の応急処置

症状が軽いと感じた場合でも、かかりつけの動物病院に相談してください。

自己判断での経過観察は危険で、治療が遅れることで重症化する可能性があります。

病院に相談するときは「いつ・どれくらい・どのようなものを食べたか」を正確に伝えるようにしましょう。

分かりにくい場合は写真を撮ったり、実物を持参するのもおすすめです。


食べて時間が経ってから症状が発生することがあるため要注意

マスカット中毒は、食べた直後に症状が出ないこともあるため非常に厄介です。

数時間〜数日後に現れる場合もあり、食べたこと自体を飼い主自身が忘れてしまうかもしれません。

食べてしまったことが判明した時点で、すぐに病院へ連絡しましょう。


「マスカット」を食べてはいけない理由や原因となる成分

マスカットが犬に有害である理由は完全には解明されていませんが、以下のような成分や作用が疑われています。


酒石酸

マスカットやブドウ、レーズンには「酒石酸」が含まれており、犬にとって腎毒性が高いと考えられています。

人間や他の動物には問題ありませんが、犬は適切に代謝できず、急性腎障害(AKI)を起こすとされています。


出典:Wegenast et al., 2022 「Acute kidney injury in dogs following ingestion of cream of tartar and tamarinds and the connection to tartaric acid as the proposed toxic principle in grapes and raisins」



ポリフェノール類

ブドウやマスカットに含まれる「フラボノイド」や「ポリフェノール」などの抗酸化成分が、犬の腎臓に悪影響を及ぼしている可能性も考えられています。


出典:Pet  Poison Helpline – Grapes and Raisins Veterinary Clinics of North America, 2004 – JE Stokes et al.(要旨)



また、マスカットの加工品(ゼリーやジュース)、ドライフルーツのレーズンも危険です。

特にレーズンは水分がなくなり毒性が凝縮されているため、より少量で中毒を起こすと報告されています。

犬が食べられる果物一覧

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犬が食べても安全とされる果物もいくつかあります。 ただし、量や調理の仕方を間違えると健康を害することがあるため、正しい知識が必要です。 おやつの量は1日の総カロリーの10%以内に抑えることが推奨されているため、適量を与えるようにしましょう。

出典:AMERICAN KENNEL CLUB


出典:Feeding Treats to Your Dog - WSAVA



りんご(種・芯・皮は除去)

りんごはビタミンC、食物繊維、カリウムが豊富で、犬にとっても体に良い果物のひとつです。

ただし、りんごの種や芯には「アミグダリン」という成分が含まれており、体内で有毒なシアン化合物に変化する可能性があるため、必ず取り除く必要があります。

皮は農薬残留の可能性もあるため、剥いてから与えましょう。

体重5kgの犬であれば、薄くスライスしたものを2〜3枚(20〜30g)までが適量です。

細かく刻んだり、すりおろすと消化しやすくなります。


バナナ(皮を完全に除去)

バナナは糖分が高い果物ですが、カリウムやビタミンB6、マグネシウムを含み、腸内環境を整える効果も期待できます。

ただし、糖質が高いため与えすぎると肥満や血糖値上昇のリスクがあります。

皮は必ず取り除き、体重5kgで1〜2cmの厚さ(10〜15g程度)を目安に、輪切りにしてからさらに細かくカットして与えると安心です。


いちご(ヘタと葉を除去)

いちごは抗酸化作用をもつビタミンCやアントシアニンが豊富で、免疫力アップにもつながる果物です。

キシリトールがわずかに含まれていますが、中毒症状が出る量を食べることは不可能なため、おやつとして与える分には問題ありません。

ヘタと葉を取り除き、洗ってから小さくカットしてください。

体重5kgで、1〜2粒を4分の1サイズに切り分けて与える程度が適量です。


スイカ(種と皮を除去)

夏場の水分補給に最適な果物で、熱中症対策にも有効です。ただし、種には消化器を傷つける恐れがあり、皮も硬く消化不良を招くため、必ず取り除いて果肉のみを与えましょう。糖分も多いため、与えすぎは要注意です。体重5kgで、薄切り1〜2枚(20〜30g)程度が目安です。

犬が食べられない果物一覧

普段私たちが何気なく食べている食材も、実は犬にとって危険な場合もあります。ここでは犬に与えてはいけない果物の一部を紹介します。


ぶどう・レーズン

マスカット同様ぶどうやレーズンは、犬にとって危険な果物のひとつです。

わずか数粒でも急性腎不全を引き起こし、嘔吐・下痢・食欲不振などの症状から最悪命に関わる可能性もあります。


マカダミアナッツ

マカダミアナッツは、中枢神経や筋肉系に障害を引き起こすことが知られています。

症状としては嘔吐、ふらつき、後ろ足が動かなくなる、震え、発熱などです。

数粒でも中毒症状が出る場合もあるため、うっかり与えないよう十分に注意しましょう。


さくらんぼ、桃、杏、梅の種

果肉自体は問題ない場合もありますが、種に含まれる「アミグダリン」という成分が危険です。

アミグダリンは犬の体内で「シアン化水素(青酸)」という有毒ガスに変化し、急性の中毒症状を引き起こします。

種をかじったり、飲み込んだりしてしまうと、呼吸困難、心拍異常、痙攣、意識消失といった症状が出る可能性があり、命に関わるおそれもあります。

種のサイズによっては腸閉塞を起こすリスクもあるため、果物全体を避けたほうが安全です。


レモン・ライム

レモンやライムなどの柑橘類には、果皮や果汁に「リモネン」や「ソラレン」という精油成分や光毒性のある物質が含まれています。

これらは犬にとっては刺激が強く、少量でも中毒症状を引き起こすことがあります。

摂取後には、嘔吐や下痢に加え、光に当たった皮膚の炎症(光線過敏症)、元気消失、神経系の異常などが現れることがあります。

お菓子やドレッシング、アロマオイルなどから思わぬ誤食につながる場合もあるため注意が必要です。


未熟な柿・柿の種

完熟した柿の果肉は少量であれば与えても大きな問題はありませんが、未熟な柿や柿の種には「タンニン」という強い渋み成分が多く含まれています。

タンニンは胃腸を刺激し、下痢や嘔吐、食欲不振を引き起こす原因となります。

さらに、柿の種は腸閉塞や誤嚥のリスクが高く、詰まると命に関わります。

柿を与える際は十分に熟しているかどうかを確認し、種・皮をしっかり除去する必要がありますが、体調に不安がある場合は与えないほうが無難です。

まとめ

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愛犬が万が一マスカットを食べてしまった場合は、たとえ症状が軽く見えてもすぐに動物病院へ相談・受診しましょう。 日頃から家族全員で情報を共有し、誤食が起こらないよう普段から環境を整えることが何よりも重要です。 愛犬の健康に気をつけながら、楽しいおやつの時間を作ってあげてくださいね。

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獣医師 原田瑠菜

獣医師、ライター。 大学卒業後、畜産系組合に入職し乳牛の診療に携わる。 その後は動物病院で犬や猫を中心とした診療業務に従事。 現在は動物病院で働く傍ら、ライターとしてペット系記事を中心に執筆や監修をおこなっている。

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