• 犬の健康
  • 2025/03/05

【獣医師監修】犬の睡眠時間が長い理由|異常な睡眠の見極め方と理想の睡眠環境

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「うちの犬、やたらと寝てばかりいるけれど大丈夫なの?」 「子犬なのに睡眠時間がとても短いようで心配……」 など、愛犬の睡眠パターンに疑問を持っている飼い主さんは少なくありません。 結論からいうと、犬の平均的な睡眠時間は人間よりも長めで、浅い眠りが特徴です。 ただし、年齢(子犬・成犬・老犬)や犬種、飼育環境によっても睡眠時間は大きく変わります。 たとえば子犬や老犬は基本的に長時間寝ることが多い一方、成犬は活動量や生活リズムが人間と近い場合もあります。 本記事では、犬の一般的な睡眠の傾向と、睡眠が長すぎたり短すぎたりするときに気をつけたい「異常な睡眠」の見極め方を詳しく紹介します。 最後には、犬にとって理想的な寝床や睡眠環境、そして快適な睡眠をサポートするために飼い主さんができる工夫についても解説します。 愛犬の健康を守り、元気に長生きしてもらうためにも、ぜひ参考にしてみてください。

この記事の監修

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1. 犬の睡眠は「長くて浅い」が基本

1-1. 犬の睡眠の特徴

犬は人間よりも長時間眠る傾向がありますが、その代わり眠り自体が浅いと言われています。

なぜなら、犬は外敵や物音に素早く反応するために、常に警戒心を持ちながら眠る習性があるからです。

たとえば、家族の生活リズムがバラバラであっても、犬は少しの物音に反応して起き上がり、また短時間の睡眠を繰り返して疲れを取ろうとします。

こうした断続的な睡眠パターンは、ごく自然なことです。


飼い主さんのなかには「夜遅い人と朝早い人がいて、愛犬がまとまった時間眠れていないのでは?」と不安になる方もいるでしょう。

しかし、犬はもともと“こま切れ”で眠る生き物です。

飼育環境や家族構成によって睡眠リズムが左右されやすい分、日中に長めの昼寝を取り入れることで疲れを解消している場合も多いのです。


1-2. 犬の睡眠時間は犬ごとに異なる

実は、「犬の平均的な睡眠時間は〇時間」という明確な数字を示すのは難しいとされています。

おおよその目安として、成犬で1日12~15時間程度の睡眠をとることが多いと言われていますが、以下のような要因でも睡眠時間は変動します。


・年齢(ライフステージ)の違い

 子犬は成長期にあるため、1日18~20時間ほど眠ることも珍しくありません。

 逆に老犬は体力が衰え、疲れやすくなるので、若い成犬よりさらに長い時間を寝て過ごす場合があります。


・犬種や体格の違い

 一般的には、大型犬ほどゆったりと休息しやすく、睡眠時間が長めになりやすい傾向があります。

 小型犬でも活発な犬種は、短めの睡眠を小刻みにとることが多いです。


・飼育環境の違い

 家族の生活リズムによって睡眠時間やタイミングが大きく左右されます。

 昼間留守番が多い犬や共働き家庭の犬は、日中にまとまった睡眠をとることが多いでしょう。


1-3. 寝不足が疑われる場合のサイン

とはいえ、「犬の眠りが浅いのが当たり前」としても、過度に睡眠不足が続くと健康を損ねる恐れがあります。

もし以下のような様子が見られる場合は、睡眠不足やストレスの可能性を検討してみましょう。

  • 下痢や嘔吐などの消化器トラブル
  • 吠える・噛みつく・攻撃的になる、物を壊すなど問題行動が増える
  • 疲れやすく、散歩の途中ですぐに帰りたがる
  • ぼーっとして元気がなく、無気力・無関心

これらは単なる睡眠不足だけでなく、隠れた病気のサインの可能性も否定できません。

気になる場合は早めに動物病院で相談し、原因をはっきりさせると安心です。


【関連記事】子犬の睡眠時間が長い理由

2. 注意すべき犬の「異常な睡眠」

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犬の睡眠時間が長い・短いこと自体はよくあることですが、普段と比べて急激に変化した場合や、睡眠中に明らかにおかしな症状がある場合は要注意です。 ここでは、「こんなときは動物病院へ」という4つのポイントを解説します。

2-1. 急に寝る時間が増えた/減った(睡眠パターンの急激な変化)

最近になっていきなり寝てばかりいる、またはまったく眠らなくなった……。


こういった急激な変化が見られるときは、ストレスや体調不良、隠れた病気を疑いましょう。


たとえば、甲状腺機能低下症や腎臓病(慢性腎不全)など内臓の病気があると、急に嗜眠(しみん:眠っているように見えて意識が混濁している状態)が増えたり、動きたがらずにじっと伏せたりしているケースもあります。

また、心臓の僧帽弁閉鎖不全症や呼吸器の病気、骨・関節の障害などによって、痛みや息苦しさのために寝つきが悪くなり、不眠になることも考えられます。


一方、旅行や来客が続いたり、生活環境が急に変わったりしたことで疲労が蓄積して眠りが増える場合もあります。

さらに、栄養バランスの乱れ(おやつ過多、手作り食などでカロリー不足・ミネラル不足)によって体力が落ち、長時間横になっていることもあるので、ここ数日間に思い当たるできごとがないか振り返ってみてください。


2-2. 寝ているときの呼吸が早い

寝ているときに1分間に35回以上の呼吸をしているなら、心臓や呼吸器にトラブルがある可能性があります。

とくに犬伝染性気管気管支炎や短頭種気道症候群などの呼吸器系疾患にかかっていると、横になっているときでも呼吸が乱れる場合があります。

気づいた時点で早めに動物病院へ連れて行き、検査を受けることをおすすめします。


2-3. 昼夜逆転している

高齢犬に多い症状として、高齢性認知機能不全症候群(いわゆる認知症)が挙げられます。

昼間はずっと寝ているのに、夜になると落ち着かずに吠えたり徘徊(はいかい)したりするなど、昼夜逆転の行動が見られるケースがあり、加齢による脳機能の低下により睡眠リズムに大きな乱れが生じている可能性も否定できません。


この場合も早急に動物病院へ相談し、認知症への対応策や夜間のケアについて助言をもらいましょう。

昼間にある程度活動させる、日光を浴びさせるなど、睡眠リズムを整える工夫も有効です。


2-4. 誰かいないと睡眠時間が短い(分離不安)

家族のそばにいないとまったく寝つけない、飼い主さんがいなくなると極端に落ち着きを失うといった場合は、分離不安の可能性があります。

飼い主さんが外出すると激しく吠え続けたり、物を壊したりするなどの行動変化も見られるかもしれません。

心当たりがある場合は、動物病院や専門のトレーナーに相談して、分離不安への対策を始めるのが賢明です。


【関連記事】犬の分離不安症の原因と症状は?留守番の不安を解消する方法



また、新しく子犬を迎えたばかりで夜にひとりで過ごさせようとすると鼻を鳴らしたり吠えて家族を呼ぶことがあり、夜に十分な睡眠が取れないケースもあります。

放置して直る場合は少なく、夜にひとりにされたタイミングで要求吠えが生じるようになり習慣化してしまう可能性があるため、早急に適切なトレーニングが必要です。


3. 犬にとって理想の寝床と睡眠環境

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愛犬にできるだけ良質な睡眠をとってもらうためには、まず寝床や睡眠環境を整えることが大切です。 犬は安心できる場所があると、より深く落ち着いて眠ることができます。

3-1. 狭く暗い寝床が安心

犬は本能的に巣穴のような、狭くて暗い場所を好む傾向があります。

たとえば、クレートやケージに布をかけて暗くする、体型に合ったサイズのベッドを用意するなど、犬が“自分だけの落ち着ける空間”を持てるようにしましょう。

人の行き来や物音が多い場所に寝床を置いている場合は、少し離れた静かな場所へ移動させるだけでも睡眠の質が向上しやすくなります。


3-2. 温度・湿度に注意

犬は体温調節が得意ではありません。

夏は熱中症、冬は低体温症のリスクが高まるため、室温・湿度を快適に保つ工夫が必要です。

エアコンや暖房器具の設定、風通しを考慮しながら、愛犬が寝る場所の温度環境を確認してみてください。


3-3. トイレから離れたプライベート空間

トイレの近くで寝るのを嫌がる犬も多いので、寝床とトイレはできるだけ離すのがおすすめです。

犬は寝床の衛生状態が良く、温かくて居心地が良いとその寝床への愛着が強まります。

夜に落ち着いて眠るためにも衛生的で快適な環境を整えてあげましょう。


3-4. 規則正しい生活リズムと運動

また、いくら寝床を整えても運動不足や生活リズムの乱れが続くと、犬は精神的にも不安定になりやすいです。

散歩や室内遊びでしっかり身体を動かす、毎日の起床・就寝時間をなるべく一定にするなど、生活リズムを安定させることも睡眠の質を高めるポイントです。


【関連記事】

・犬がくつろげる居住環境を整えよう
・犬と一緒に寝ることは良いのか悪いのか

まとめ

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・犬の睡眠時間について 犬は人間より長い時間を眠るものの、眠り自体は浅く断続的です。 成犬で1日12~15時間程度がひとつの目安といえますが、子犬や老犬は特に長く寝ることが多く、1日に16~18時間寝ることもあります。 ただし、年齢や犬種、飼育環境によっても大きく変化するため、あくまで参考程度に考えましょう。 ・動物病院へ行くべき「異常な睡眠」 睡眠パターンが急激に変わった、寝ているときの呼吸が異常に早い、昼夜逆転や分離不安の疑いがあるなどは要注意です。 体調不良やストレスが原因のほか、病気の可能性もあるため、些細な違和感でもすぐに獣医師へ相談しましょう。 特に、食欲の急な低下・増加、水の多飲多尿、元気消失、脱毛、性格変化(攻撃的になる・触られるのを嫌がる)なども併発していれば、なおさら早めの受診をおすすめします。 ・犬にとって快適な寝床と睡眠環境 狭く暗い場所を好む本能を考慮し、クレートやケージ、体に合ったベッドを用意すると落ち着いて眠りやすくなります。 家族の生活音が少ない場所や快適な室温・湿度を保つことも重要です。 運動不足や不規則な生活リズムが続けばストレスがたまり、睡眠の質も低下しがちなので、生活全般を見直すことが大切です。

愛犬が安心してしっかり眠り、健康で快適に過ごせるよう、ぜひ今一度生活環境や睡眠習慣を点検してみてください。


また、ぷにわんモールでは犬の睡眠をサポートするためのベッドやグッズを多数取り扱っています。

質の良い寝具を選ぶことで、愛犬の睡眠の質もさらに高まるかもしれません。


ぷにわんモールのベッド・睡眠グッズ一覧

飼い主さんのちょっとした気づきと工夫が、愛犬の健康寿命を大きく伸ばすことにつながります。

もし少しでも「いつもと違う」と感じたら、早めに専門家へ相談しましょう。

日頃から愛犬の睡眠パターンや生活リズムを把握しておけば、異変に早期に気づきやすくなるはずです。


ぜひ、この記事をきっかけに愛犬の睡眠の質を見直してみてください。


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獣医師 茂木千恵

東京大学大学院農学生命科学科獣医学博士課程卒。獣医師。博士(獣医学)。 アニマルCBD研究会代表獣医師。藤田医科大学医学部客員講師。日本臨床カンナビノイド学会登録医。 (株)モンパニエ・動物臨床行動学研究室主宰。エバーグリーンペットクリニック恵比寿行動科担当医。 日本獣医学会、日本獣医行動研究会、日本補完代替医療学会所属。 辰巳出版雑誌Shi-ba、プードルスタイル等監修。猫にいいこと大全、動物行動学+猫マンガ ニャン学、マンガ動物行動学 犬の気持ちとしぐさがよくわかる!(本;いずれも主婦の友社)監修。 犬と猫の問題行動を対象とした執筆、研究教育活動を行う。 また、ペットの飼い主を対象とした行動学等の講演活動も行っている。 日本テレビ「天才!志村どうぶつ園」、「1周回って知らない話」出演、テレビ朝日「林修の今でしょ!講座」監修、MBS、テレビ東京等番組出演・監修多数。

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