• ものがたり
  • 2020/10/19

オーディオ機器メーカー「ビクター」のロゴに描かれた犬「ニッパー」の物語

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オーディオ機器メーカー「Victor(ビクター)」のロゴに描かれた犬と聞いて、ピンとくる方もいらっしゃるのではないでしょうか? 「ビクター」のロゴマークには蓄音機の音に耳を傾けた一匹の犬が描かれています。 そしてそのロゴの下には“HIS MASTER’S VOICE”と綴られています。 ここに描かれている犬には「ニッパー」という名の実際にモデルになった犬がいるのです。 ここではこのニッパーがなぜロゴマークに描かれているのか?をお伝えしたいと思います。

1. ニッパーと「HIS MASTER’S VOICE」

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「ニッパー」は1884年にイギリスで生まれました。 お客さんの足をしきりに噛もうとするため、「挟む」という意味のニッパーと名付けられたのです。 飼い主はマーク・ヘンリー・バロウドと言うイギリスの風景画家です。 ニッパーが3歳だった1887年にマークが病死したため、ニッパーは、同じく画家で弟のフランシス・バロウドに引き取られました。 マークはニッパーをとても可愛がっており、フランシスも兄の忘れ形見であるニッパーを大切に育てたそうです。 ある日、フランシスは家にあった蓄音機で録音されていたマークの声を流しニッパーに聞かせました。 するとニッパーは蓄音機をのぞき込むようにし、首を傾けたのです。 ニッパーにとっては、最初の飼い主であるマークの声が蓄音機から聞こえてくるのを不思議に感じたのでしょう。 その姿に感銘を受けたフランシスは、すぐにニッパーの姿を描きました。 その絵の題名が「HIS MASTER’S VOICE」です。

2. ロゴになったニッパー

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このエピソードに感動した円盤蓄音機の発明者であるエミール・ベルリナーは自身の円盤蓄音機製造・販売会社「ベルリーナ・グラモフォン」(のちのビクターの元となった会社)の商標としてこの「HIS MASTER’S VOICE」を登録し、その後も使われ続けているのです。 現在では日本ビクターはJVCケンウッドと名前は変わりましたが、この「ニッパー」のロゴは主に音楽エンターテイメント事業を手掛けるビクターエンタテインメントのロゴとして広く親しまれています。 また、ビクターエンタテインメントの子会社にアニメーション映像・音楽作成を手掛ける株式会社フライングドッグという所があります。 そのブランドロゴにはジャンプしている犬の姿が描かれていますが、これはビクターのシンボルであるニッパーをモチーフにしたものだそうです。 ちなみに日本にもあるレコード販売店のHMVの名前は、もともとグラモフォン社の小売部門であったため、「His Master’s Voice」の頭文字を取って付けられています。

~おわりに~

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私たちが日頃目にするロゴマークにも、さまざまな歴史があります。 今回ご紹介した日本ビクター(現JVCケンウッド)のロゴマークであるニッパーの姿もなぜそのようになったかを知らなければただのマークですが、それまでの歴史や流れを知ると、とても興味深いものに変わりますね。 現代の発達したオーディオで再生された飼い主の声を聴いたら、ニッパーは一体どんな表情を浮かべるでしょうか? 昔とはまた違ったロゴマークが出来上がるかもしれませんね。

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南 健

元ドッグトレーナー。 北国で生まれ育ち、犬に囲まれた生活を送る。 現在は一線から離れ、ペット系メディアのライターを中心に活動。

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