愛犬の歯の健康を守るためには、歯磨きが必要です。 愛犬の歯磨きをしようと思っても、いつから始めるべきなのか?どのくらいの頻度でやればいいのか分からない飼い主さんが多くいらっしゃいます。 そこで今回は、下記について解説していきます。 ・犬の歯磨きはいつから始めるべきか ・犬に歯磨きが必要な理由 ・犬の歯磨きに必要なもの ・歯磨きをする前に慣れさせるトレーニング ・実際に歯磨きをするトレーニング ・犬の歯磨きの頻度は? ・犬が歯磨きを嫌がる理由
犬の歯磨きはいつから始めるべきなのか?
犬の歯磨きは、犬を迎えて環境に慣れたらなるべく早めに始めるようにしましょう。 子犬は生後4~6ヶ月から乳歯が抜けはじめ、生後8~12ヶ月で永久歯に生え揃います。 「乳歯が抜けてしまうのに歯を磨く必要があるの?」と疑問を持つ方もいるかもしれませんが、実は乳歯が生えている頃から歯磨きをする必要あります。 なぜなら、犬が歯磨きに慣れるまでには時間がかかるからです。 ここまで聞くと、成犬から歯磨きの習慣付けを始めるのは遅いのかもと思ってしまうかもしれませんが、そんなことはありません。 今までやってなかったことをいきなり始めるので、子犬の時よりは慣れるまでに時間がかかってしまいますが、コツコツと慣れさせることで歯磨きをさせてくれるようになります。
犬に歯磨きが必要な理由
犬に歯磨きがなぜ必要なのでしょうか?
それは「歯周病予防のため」です。
犬も人間と同じように歯周病が悪化すると歯周病菌が体中に回ってしまい、内臓疾患を引き起こすことがあります。
最悪の場合は死に至ることもあります。そうならないために、口腔ケアとして犬には歯磨きが必要なのです。
本来、野生の犬には歯磨きの習慣がありません。
人間と生活をする前の犬には歯磨きをする必要はなかったのです。
しかし、人間と生活するようになった現在では、以下の理由で犬にも歯磨きが意識されるようになりました。
- ドッグフードやおやつを食べることによって、食べカスが口に残ることが多くなった
- 寿命が延びて、歯周病予防等の観点から口の健康の重要さが注目されるようになった
- ブラシタイプ
- シートタイプ(ガーゼを含む)
- 指サックタイプ
- 犬が好きな味がするものを使うと、愛犬が喜んで歯磨きをやらせてくれる
- 歯垢を分解する成分が入っており、より歯をきれいにすることができる
- 歯ブラシに水(歯磨き粉)をつける
- 鉛筆持ちで歯ブラシを持つ
- 犬の口唇を指(歯ブラシを持たない手)で持ち上げる
- 歯の表面に対して45度の角度で歯周ポケットにブラシを当て、小刻みに磨く
- 磨かせてくれたら、ご褒美としておやつをあげる
ドッグフードやおやつを食べることによって、食べカスが付きやすくなった
飼い犬の主食であるドッグフードやおやつは歯に付きやすく、動物の肉を主食とする野生の犬より食べカスが歯に残りやすくなりました。
食べかすをそのままにしておくと口の中で細菌が繁殖し、歯周病の原因となります。
寿命が延びて、口腔ケアの重要さが認知されるようになった
今までは犬の寿命が短く、歯周病の影響が顕在化する前に亡くなっていました。
しかし医療の発達により、犬も寿命が伸び続けているため、歯周病が問題視されるようになりました。
歯周病による健康への影響として、「顎の骨を溶かす」「口の細菌が体中に回る」等があります。
犬の寿命が延びた現在では、健康のままでいられるように歯周病予防が重要視されています。
犬の歯磨きに必要なもの
犬の歯磨きに必要なものは次の3つです。
①歯ブラシ
②おやつ
③歯磨き粉(歯磨きジェル)
これら3つについて説明していきます。
犬の歯磨きに必要なもの:歯ブラシ
犬の歯ブラシには3つのタイプがあります。
こちらの記事:3種類の犬用歯ブラシ メリット・デメリットを紹介します!
に詳しくまとめたので、ぜひ参考にしてみて下さい。
歯ブラシによる歯磨きが歯周病予防に最も効果的な方法です。ワンちゃんに合った歯ブラシを選んでみてください。
犬の歯磨きに必要なもの:おやつ
おやつと聞いて、「おやつをあげたらせっかく綺麗にした歯を汚してしまうのでは?」と心配する飼い主さんもいるかもしれません。
でも、おやつは「歯磨きの習慣付けのため」にとても大事な役割を持っています。
もし、歯磨きの後におやつをあげて、歯を汚すのが嫌だという方はおやつをデンタルガムに替えると歯磨きをした歯を汚してしまう心配をしなくて済みますね。
犬の歯磨きに必要なもの:犬用歯磨き粉(歯磨きジェル)
歯ブラシに水をつけるだけでも歯の汚れを十分落とすことができます。
犬用歯磨き粉を使用することによって
歯磨きをする前にマスターしておきたいこと
犬の歯磨きを始める前に、口周りを触ることから始めましょう。
なぜなら、犬にとって歯磨きは何のためにさせられているのか全く分からないからです。
なので、いきなり歯ブラシを使って歯磨きを始めようとしても嫌がってやらせてくれなかったり、無理やり歯磨きすることによってトラウマになったり、歯磨きを嫌いになってしまいます。
『犬の歯磨く前に絶対必要な練習』をドッグトレーナー鈴木拓真さんの動画を参考に解説していきます。
【プロフィール】
鈴木拓真
麻布大学獣医学部動物応用科学科卒業。
スタディ・ドッグ・スクール所属のドッグトレーナー。
Step1:歯みがきをする姿勢を見つけよう
歯磨きは愛犬が受け入れやすい姿勢で行ないましょう。
・正面向かい合ってオスワリ/フセ/マテ(どの大きさの犬でも)
・犬を後ろから抱え込む姿勢(大型犬におすすめ)
・膝の上で横向き抱っこ/座らせる(小型犬におすすめ)
・膝の上で仰向け抱っこ(小型犬におすすめ)
どのような姿勢がやりやすいか、はじめに探してあげる事が大切です。
犬が落ち着いて受け入れられて、飼い主が歯磨きをしやすい姿勢であれば大丈夫です。
活発な性格で、どの状況でも落ち着かない場合は、リードを付けた状態で練習を始める事をお勧めします。
また、診察台のような高い台で動くスペースが限られていると落ち着きやすいです。
☆ポイント:歯みがきが嫌なことだと思わせないようにしましょう。
・犬がリラックスして落ち着いている時に行ないましょう。
(たくさん遊んだ後や散歩後など、犬が満足しているときに練習するとよいでしょう。)
・短時間から練習を始めましょう。
・大好きな食べ物をたくさん用意して歯磨きするとおいしいものがもらえることを教えましょう。
Step2:歯を触っても嫌がらないようにするトレーニング
歯や口元を触られることを嫌がっては、絶対に歯磨きはできません。
まずは、触られることに慣らしていきましょう。
①ご褒美をあげながら触る
はじめは、人の手からドッグフードやおやつをあげて、「手自体」を怖がらないようにします。
だんだんと、手でフードを包むように持ったり、KONGなどの知育玩具に食べ物を詰めたりして、犬に食べさせながら口元を触っていきます。
触られていることを気にしていないようであればOKです。
・口元を触れる/なでる
・口元を包む
・唇をめくる(先から奥まで)
・歯を触る(犬歯~奥歯(臼歯)~前歯(切歯))
歯など口の中を触る時は、人の指にペースト状のおやつを塗って、口の中に指が入ることを嬉しいことと教えていきましょう。
ふやかしたフードを使って手に匂いを付けるだけでも嫌がりにくいです。
②触ってからごほうびをあげる
手にご褒美を持ち「マテ」と言って、犬が少しでも動きを止めたら「いい子」とほめてご褒美をあげましょう。
オスワリ等出来る犬は、座らせても構いません。
犬がマテをしている間に、①で練習した部分を触っていきます。
・口元を触れる/なでる
・口元を包む
・唇をめくる(先から奥まで)
・歯を触る(犬歯~奥歯(臼歯)~前歯(切歯))
触る時間、犬を待たせる時間は、0,5秒くらいからはじめ、1秒、2秒と少しずつ時間を延ばしていきましょう。
この時、犬が触られることを嫌がることを教えたくないので、手から逃げようとしたときに褒めるのではなく、動きを止めて受け入れている時にほめてあげるようにしてください。
だんだんと手にご褒美を持たず、机に置いたり、ポケットに入れたりして、両手で触れるように練習していきます。
片方の手で唇をめくり、もう片方の手で歯を触れるようにしましょう。
上手にマテができたら「いい子」と言ってから、ご褒美を出してあげるようにしてください。
犬の歯磨きのやり方
犬が歯に触られることに慣れてきたら、実際に歯磨きをしてみましょう。
こちらもドッグトレーナーの鈴木さんが歯ブラシを使った犬の歯磨きの5ステップを説明していきます。
Step1:歯ブラシに水(歯磨き粉)をつける
まずは歯ブラシに水をつけましょう。
水だけでも十分な除去力があります。
「おいしい歯磨き粉がないと歯磨きをやらせてくれない」「もっと綺麗に歯を磨いてあげたい」という方は犬用の歯磨き粉を使用するといいでしょう。
Step2:鉛筆持ちで歯ブラシを持つ
“グー”の握り方で歯ブラシを持って犬の歯磨きをする方がいます。
しかし、この持ち方だと必要以上に力が入り、歯肉や歯を傷つける原因になるので、必ず鉛筆持ちで軽い力で磨くようにしましょう。
Step3:犬の口唇を指(歯ブラシを持たない手)で持ち上げる
歯ブラシを持っていない手で磨く歯の該当する所の口唇を持ち上げましょう。
持ち上げて見ることによって歯の汚れ(食べカス・歯垢)がどこについているかがわかりやすくなり、どこを磨くべきなのか判断ができます。
Step4:歯の表面に対して45度の角度で歯周ポケットにブラシを当て、小刻みに磨く
口唇を持ち上げたら、歯を磨きましょう。
歯の表面に対して45度の角度で歯周ポケットにブラシを当て、汚れを掻き出すように小刻みに優しく磨いてください。
特に汚れやすい歯は上顎の第4後臼歯と下顎の第1前臼歯の大きな歯で、これらの歯はモノを食べる時によく使われているので、汚れていることが多いです。
ですから、「慣れていなくて、すべての歯が磨けない」という方は、まず、上顎の第4後臼歯と下顎の第1前臼歯を磨いてあげましょう。上顎の第4後臼歯と下顎の第1前臼歯の位置は下記画像を参考にしてください。
Step5:磨かせてくれたら、ご褒美としておやつをあげる
愛犬が歯を磨かせてくれたら、おやつをあげましょう。
歯磨きを継続してやらせてもらうには、ご褒美のおやつが必要不可欠です。
歯磨きに慣れたからといってご褒美をあげなくなると「言うこと聞いたのに良いことがない」と学習して、やらせてくれなくなってしまいます。
歯磨きの習慣が付いたら毎回のおやつは必要ありませんが、何回に一度は歯磨き後のおやつをあげるようにしましょう。
犬の歯磨きはどのくらいの頻度で磨く?
犬の歯磨きの適切な頻度は1日1回です。 犬の歯垢(歯磨きでとれる汚れ)は2日で歯石(歯磨きではとれなくなる汚れ)に変わってしまいます。「だったら2日に1回やればいいんじゃない?」と思う方もいらっしゃると思いますが、磨き残しや愛犬の気分でやらせてくれないこともあるので、犬の歯磨きは毎日行うことが理想的です。 加えて、一定の間隔で、動物病院のデンタルクリーニングを受けるのがいいですね。 ちなみに、動物の口腔ケア先進国のアメリカ動物病院福祉協会(AAHA)では、小型犬~中型犬は1歳まで、大型犬は2歳までに動物病院で行うレントゲン写真やデンタルクリーニングを受け、隠れている歯やうまく形成されていない歯があった場合は治療し、その後は歯周病予防のために一定間隔でデンタルクリーニングを受けることが推奨されています。
犬が歯磨きを嫌がる理由
歯磨きをするときに犬が嫌がってしまう理由として、
①歯磨きが単純に嫌い
②嫌がればやめてくれると思っている
③磨くときに力が入りすぎている
の3つがあげられます。これらについて説明します。
歯磨きが単純に嫌い
人も犬も口の中に得体の知れないものを突っ込まれたら嫌な感情を抱きます。
人は歯磨きのために歯ブラシという異物を口の中に入れることを理解しています。
でも、犬は歯磨きの目的がわからないので、「歯磨き=口の中に得体の知れないものを突っ込まれるもの(嫌な事)」と認識してしまい、歯磨きが嫌いになってしまいます。
歯磨きの目的を犬に理解してもらうのではなく、「歯磨き=良いこと」と認識してもらう必要があります。
そのためには、口を歯ブラシで触られることから慣れさせ、ご褒美としておやつをあげることから始めてだんだんと口の中に歯ブラシを入れられることに慣れてもらうことが大切です。
愛犬に「口を触れられることから慣れてもらわなきゃ」という方は
こちらの記事:犬の歯磨きに必要な準備
を参考してください。
歯磨きを―から始めるためのしつけ方を説明しています。
嫌がればやめてくれると思っている
歯磨きをやらせてくれていたのに、急に歯磨きをやらせてくれなくなったというケースは「嫌がればやめてくれると犬が知っている」という理由が考えられます。
「愛犬の集中力が切れて、嫌がり始めたから歯磨きをやめること」はストレスを溜めさせないために良いことではあります。
しかし、嫌がったらすぐやめると「抵抗する=やめてくれる」と学習してしまいます。
なので、嫌がり始めてすぐにやめるのではなく、抵抗しなくなって落ち着いたときに歯磨きをやめましょう。
磨くときに力が入りすぎている
力の入れ具合は人間と犬ではそもそも違いがあります。
もしかしたらきれいに磨こうと愛犬の歯を磨いているときに力を入れてすぎているかもしれません。
磨くときに余計な力が加わると当然痛いですし、歯肉からの出血を招くことになってしまいます。
そうなると、愛犬が歯磨きを嫌いになるのはもちろん、口の健康のために行うはずの歯磨きがかえって口の中を傷つけてしまう恐れがあります。
歯ブラシは必ず鉛筆持ちで握り、歯を磨いてあげる前に自分の腕などに歯磨きをこすって力を入れすぎていないかチェックをしましょう。
歯磨きをして、愛犬の歯の健康を守ろう
犬の歯磨きはできるだけ早く始め、毎日行うことが大事です。 6歳以上の犬のほとんどが歯周病予備軍、または、歯周病になっているといわれています。 歯周病が悪化すると、最悪の場合、人間と同じように心臓病につながって亡くなってしまうケースもあります。 今まで犬の歯磨きの必要性を知らなかった方、歯磨きの習慣がなかった方にとっては大変に感じるかもしれませんが、愛犬の歯の健康守るためにも慣れさせるところから始めてみましょう。 初めのうちはシートタイプの歯ブラシ、デンタルガムなどのデンタルケアグッズを使うのもいいかもしれませんが、最終的にはブラシタイプの歯ブラシを使用し、デンタルガムなどはあくまで補助的な役割で使いましょう。