子犬との暮らしは、愛らしい仕草や好奇心いっぱいの毎日で、思わず笑顔になってしまう場面がたくさんありますよね。 その一方で、「手や家具をなんでも噛んじゃう」「甘噛みがどんどん強くなってきた」など、噛み癖に悩む飼い主さんも多いのではないでしょうか。 とくに初めて子犬を迎えた方にとっては、「どこまでが遊び?」「叱っていいの?」「このままで大丈夫かな?」と、不安や疑問を感じることも多いはずです。 そこで今回は、子犬がなぜ噛むのかという理由から、やってはいけないNG対応、そして噛み癖を直すための方法まで、じっくりご紹介していきます。
子犬が噛むのはなぜ?主な5つの理由
まず知っておきたいのは、「噛む=悪いこと」ではないということ。 子犬にとって「噛む」という行動は、成長に欠かせない自然な行動のひとつです。 ただし、放っておくと癖になり、将来的に大きな問題につながることもあるため、子犬が噛む理由を理解したうえで適切に対処することが大切です。
関連記事:犬が手や家具に甘噛みをする5つの理由と3つの対処法~ドッグトレーナーの解説付き~
1. 歯の生え変わりによるムズムズ感
生後3〜6ヶ月ごろの子犬は、乳歯から永久歯への生え変わりの時期。
ちょうど人間の赤ちゃんが歯固めをかじるように、子犬も歯茎のムズムズを解消するため、あらゆるものを噛みたがります。
この時期に見られる「とにかく何でも噛む!」という行動は、ごく自然なことなのです。
ただし、噛んでよいものといけないものをきちんと区別して教えてあげる必要があります。
2. 遊び・甘えの延長として噛む
飼い主さんと出会う前、兄弟犬と一緒に過ごしていた頃は、じゃれ合いの中でお互いを噛み合って遊ぶのは当たり前だったわんちゃんもいます。
その感覚が残っていると、人間の手や足も「遊び相手」として噛んでしまうことがあるのです。
とくに、興奮しやすい性格の子や、遊び足りていない子は、飼い主さんとのスキンシップ中に噛みつく行動が出やすい傾向にあります。
これを見過ごすと、「噛めば遊んでもらえる」と覚えてしまうこともあるため、注意が必要です。
3. ストレスや退屈が原因
お散歩やおもちゃ遊びなど、運動や刺激が不足していると、子犬は退屈からくるストレスを噛むことで発散しようとします。
これは、エネルギーのはけ口を見つけられない状態ともいえるでしょう。
また、飼い主さんとのコミュニケーションが足りない場合にも、注意を引くために家具や人の手を噛むことがあり、「かまってほしい」というサインとしての噛み行動もあるのです。
4. 恐怖や警戒心による防御反応
見知らぬ人に突然触られたり、大きな音に驚いたりしたとき、子犬は身を守るために「噛む」という行動をとることがあります。
これは本能的な防衛反応で、決して攻撃的な性格とは限りません。
とくに慎重な性格の子や、保護犬として迎えられた背景をもつ子は、この傾向が強いこともあります。
無理に触れようとせず、信頼関係を少しずつ築くことが大切です。
5. 誤ったしつけや対応の影響
噛んだときに「ダメ!」と大声で叱ったり、手で叩いたりしてしまうと、子犬は「飼い主=怖い存在」と認識してしまい、不信感からさらに噛むようになってしまうケースがあります。
また、逆に「可愛いから」と甘噛みを許していると、「噛んでも怒られない」と学習してしまい、行動がエスカレートしていくことも。
しつけにおいては、感情的な対応を避け、「どうして噛むのか?」という理由を考えながら、根気よく教えていく姿勢が求められます。
年齢別|噛み癖の特徴としつけの考え方
子犬の成長には個体差がありますが、年齢ごとに見られる「噛む」行動の傾向や、しつけのポイントにはある程度の共通点があります。
生後2〜3ヶ月|親や兄弟から離れた時期
生後2〜3ヶ月の時期は、ブリーダーや保護施設、親犬・兄弟犬のもとを離れて、はじめて家庭にやってくるタイミングです。
まだ噛む力の加減がわからず、力任せに甘噛みしてしまう子も少なくありません。
親兄弟との関わりの中で「これ以上噛むと痛い」「これくらいなら大丈夫」といった感覚を学んできた子犬も、人間との関わりではそれを一から覚え直す必要があります。
そのため、飼い主さんが「噛んだらどうなるか」をしっかりと教えてあげることが大切です。
痛みを感じたらすぐに「イタッ」などと短く反応し、その場から離れるなどして「噛んだら楽しくない」と伝えていきましょう。
生後4〜6ヶ月|歯の生え変わりピーク
生後4〜6ヶ月頃は、乳歯から永久歯への生え変わりが本格化するタイミング。
歯茎のムズムズ感がピークになり、強い噛み欲求が出やすくなります。
家具の角、スリッパ、コード類など、さまざまなものを噛みたがるのはこの時期の特徴。
とはいえ、これは本能に近いものなので、頭ごなしに「ダメ!」と叱るより、噛んでいいものをきちんと用意してあげることが最優先です。
例えば、歯固め専用のおもちゃやロープトイなどを活用することで、噛み欲求を適切に発散させることができます。
生後7ヶ月〜1歳|思春期・自立心が芽生える時期
成犬に近づくにつれて、子犬にも自我や自立心が育ってきます。
生後7ヶ月〜1歳頃のわんちゃんは、以前は言うことを聞いていたのに急に反抗的になったり、あえて禁止されたことを試すような「試し行動」が見られる時期です。
このタイミングで噛み癖が再発したというケースも少なくありません。
こうした時期に大切なのは、飼い主の一貫した態度とルールの徹底です。
昨日は怒ったけど今日は許す、という対応を続けると、子犬は混乱してしまいます。落ち着いて、感情的にならず、毎回同じように対応することで、子犬は「噛んでも得することはない」と学んでいくのです。
子犬にやってはいけないNG対応とは?
ついつい感情的になってしまったり、可愛さに負けて許してしまいがちな子犬の噛み癖。しかし、ある対応をしてしまうことで、逆に噛み癖を悪化させてしまうこともあります。 ここでは、絶対に避けたい3つのNG対応をご紹介します。 ●叩いたり怒鳴る ●手を使って遊ぶ ●そのまま放置
叩いたり怒鳴る
噛まれて痛かったり、家具が壊されたショックで、つい声を荒げたり、手を上げてしまいそうになることもあるかもしれません。
しかし、このような恐怖を与えるしつけ方法は絶対にNGです。
犬は「怒られている理由」までは理解できません。
大きな声や叩く行為は、ただ恐怖心や不信感を生み出し、噛むことで自分を守ろうとする防衛本能を刺激してしまうことも。
こうなると、ますます噛み癖がエスカレートする可能性もあるため、叱るのではなく伝える姿勢が大切です。
おもちゃ代わりに手を使って遊ぶ
「まだ小さいし、甘噛みくらいなら大丈夫」と思って、手をおもちゃ代わりにして遊んでいませんか?
実はこれ、将来的にトラブルのもとになるNG行動です。
子犬は「手=噛んでいいもの」と覚えてしまい、成犬になってからも人の手に噛みつく癖が抜けなくなってしまうことがあります。
子犬期のちょっとした遊びが、後々の大きな問題につながることもあるため、遊ぶときは必ずおもちゃを使うようにしましょう。
「かわいいから」とそのまま放置
子犬がじゃれて噛んでくる様子は、たしかにとても可愛らしく、思わず笑ってしまうこともあるかもしれません。
しかし、放置してしまうと「このくらいは許される」と覚え、成長して体が大きくなったときには人や他の動物にけがをさせてしまうリスクも出てきます。
噛み癖は早めに対応すればするほど改善しやすいため、愛犬が小さいうちから教えることが一番の予防策になります。
子犬の噛み癖をやさしく直すしつけ方法
噛む行動をやめさせるには、「噛んじゃダメ!」とただ叱るのではなく、どうすればいいのかを、子犬にやさしく伝えていくことが大切です。 1.「ダメ」のタイミングと伝え方 2. 噛んでもいいおもちゃを用意する 3. 噛んだら遊びを中断する「無視しつけ法」 4. 社会化トレーニングを取り入れる
1.「ダメ」のタイミングと伝え方
噛んでしまったときに「ダメ!」と伝えるのは効果的ですが、タイミングが何よりも大事です。
できるだけ噛んだ瞬間に短く、低めの声で伝えることで、子犬は「今の行動がいけなかったんだ」と理解しやすくなります。
また、噛まれたときに「痛っ!」と大きめのリアクションを取り、すぐにその場を離れる無視も有効。
子犬にとって大好きな飼い主さんが構ってくれなくなることで、「噛む=楽しくない」と学んでいきます。
感情的に怒鳴ったり長く叱ったりするより、短く・静かに・的確に伝えるのがポイントです。
2. 噛んでもいいおもちゃを用意する
噛むこと自体は犬の自然な本能です。だからこそ、噛んでいいものをあらかじめ用意してあげましょう。
ロープトイやボーンおもちゃなどは、歯茎のかゆみを和らげながらストレスも発散できます。
お気に入りのおもちゃを見つけてあげることで、家具や手を噛む頻度がぐっと減る子もいますよ。
また、おもちゃが小さかったり破損したりすると、誤飲して喉にひっかかる恐れがあり非常に危険です。
愛犬の口のサイズよりも2倍以上大きいサイズで、丈夫なつくりのおもちゃを選択しましょう。
3. 噛んだら遊びを中断する「無視しつけ法」
遊びの途中で甘噛みしてきたときは、すぐに遊びをやめて、無言でその場から離れましょう。
子犬にとっては「楽しい時間が突然終わった」という体験が、強い学びになります。
この「無視しつけ法」は、子犬にとって非常にわかりやすく、効果的な方法です。
噛んだらかまってもらえないと理解すれば、自然と噛む頻度が減っていきます。
ただし、1回で効果が出るとは限らないため、何度も根気よく繰り返すことが大切です。
4. 社会化トレーニングを取り入れる
犬同士の関わりの中で、「どこまで噛んでいいのか」「どれくらいの力なら大丈夫か」を学ぶことができます。
これを社会化と呼び、子犬期のとても重要な学習のひとつです。
ほかの犬とふれあえるパピークラスやしつけ教室などでは、安全な環境の中で他の犬や人との関わりを体験できます。
お散歩中に少しずつ挨拶の機会をつくるのもおすすめです。
社会化がうまく進んでいる子は、噛む加減が上手になる傾向があります。
どうしても治らない場合は?
噛み癖のしつけには個体差があります。どうしても自分ではしつけが難しいときには、専門家への相談も検討しましょう。
専門家に相談する目安
以下のような状況が見られる場合は、専門的なサポートを受けるタイミングです。
- 噛みつきがエスカレートしている
- 出血を伴うような強い噛み方をする
- 威嚇や唸り声をともなう攻撃的な行動がある
- 家族の中でも特定の人にだけ噛みつく
このような行動の裏には、不安や恐怖、過去のトラウマ、遺伝的な傾向など、複合的な要因がある場合も。
早めに対応することで、状況が改善しやすくなります。
関連記事:【獣医師監修】犬に噛まれたら?病院をすぐに受診すべき人と傷の状態|病院へ行かない際に注意したい症状
動物行動学の専門家やしつけ教室も活用を
噛み癖の相談先としては、以下のようなプロのサポートがあります。
- 獣医師(獣医行動診療科)
- ドッグトレーナー
- しつけ相談サービス
獣医師の中でも「獣医行動診療科」では、噛み癖や攻撃行動、不安症などの問題に、医学的アプローチで対応してくれます。
ドッグトレーナーは、愛犬の性格や家庭環境に合わせた実践的なしつけ方法を指導してくれる頼もしい存在です。
パピークラスや出張トレーニングなど、状況に応じたアプローチを選べます。
また、最近ではオンラインで相談できるサービスも増えており、対面に不安がある方や、まずは気軽に話を聞いてほしい方にもおすすめです。
専門家と一緒に原因を探ることで、思わぬ解決のヒントが見つかることもあります。
まとめ
子犬が「噛む」のは、成長の一環であり、決して悪いことではありません。 しかし、そこで正しく対応しなければ、噛み癖が定着し、将来的に大きなトラブルにつながってしまうことも。 まずは「噛む=ダメ」ではなく、「噛むならこれ!」と教えることが大切です。 信頼関係を崩すような叱り方ではなく、やさしく冷静に導くことが、しつけ成功のカギとなります。 噛み癖のしつけを通して、子犬との絆をもっと深めていきましょう。