食卓で愛犬に見つめられると、ついついご飯を与えたくなるもの。 でも、生のイカは犬に与えてはいけません。 人にとっては馴染みの食材ですが、犬にとっては要注意の食べ物です。 この記事では、犬に生のイカを与えてはいけない理由から調理時の注意点、与えてもOKな魚介類の紹介まで幅広く解説します。 正しい知識を身につけて、楽しい愛犬のご飯時間をつくってあげてくださいね。
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犬が「生のイカ」を食べてしまったら命にかかわるの?
生のイカは少量では無症状の場合もありますが、多量摂取で命の危険性があるため推奨されません。 理由は複数ありますが、最も重要なのは生のイカに含まれる「チアミナーゼ」という酵素が原因でビタミンB1欠乏症になる危険性があるためです。 他にもイカに寄生する「アニサキス」という寄生虫感染症の危険性、また皮が非常に硬く犬が食べにくいことなどが挙げられます。 犬にとって生のイカは危険がいっぱいなため、避けるようにしましょう。
もし犬が「生のイカ」を食べてしまったらどんな症状がでるの?危険な症状とは?
犬が多量に生イカを食べてしまった場合、ビタミンB1欠乏症の症状に陥ると以下の症状が現れやすくなります。
・食欲や元気の低下
・ふらつきや歩行困難
・けいれん発作
時間が立つと神経症状がひどくなり、最終的には昏睡状態に陥り亡くなってしまいます。
また、アニサキス感染の場合はアニサキスが消化器を刺激することによる重度の腹痛から嘔吐、下痢などの症状に注意が必要です。
危険な症状の場合の応急処置
犬が生のイカを食べてしまい危険な症状が現れた場合、家庭だけの処置で改善させることはできません。
ご家族が行うべきことは、犬が食べたイカの量や時間、症状などを正確に把握して伝えることです。
可能であれば自宅での様子を動画や写真に記録するのも有効です。
市販の製品を食べてしまった場合は、成分表が記載されたパッケージを実物ごと持参してください。
万が一ビタミンB1欠乏症を発症した場合、初期の段階でチアミンの投与を行えば大部分が改善しますが、治療を実施しなければ亡くなってしまうとされています。
出典:Richard W.N., C. Guillermo Couto.(長谷川篤彦、辻 本元監訳)Small Animal Internal Medicine. 4th ed. 下 巻 pp. 1107. 2011.
軽度な症状は?
症状が軽度の場合としては、無症状や一時的な食欲不振などが挙げられます。
しかし食べる量がわずかでも、愛犬の体格や体調によっては少量でもビタミンB1欠乏症を発症する可能性があるため、注意が必要です。
いつもと様子が違うと感じる場合は躊躇せずに動物病院へいきましょう。
軽度な症状の場合の応急処置
普段と変わらない場合は様子を見たくなりますが、確実に生イカを食べてしまっている場合は動物病院に相談するのが安心です。
生イカを食べてから時間が経っていない場合は、動物病院で催吐処置(薬で吐かせる処置)を行うことでイカを吐かせ、中毒を回避できる可能性があります。
少しだけ舐めてしまった程度であれば、注意して様子を観察しましょう。
念の為、事前にかかりつけ病院に状況を伝えておいても良いでしょう。
食べて時間が経ってから症状が発生することがあるため要注意
生イカを食べたことによるビタミンB1欠乏症の症状は比較的早期に現れることが多いとされています。
しかし愛犬の年齢や体調、体格により消化にかかる時間に差があり、後から症状が現れる可能性もあるので油断はできません。
最も大切なのは、症状が出る前に生イカの誤食に気づき早めに対処することです。
犬が「生のイカ」を食べてはいけない理由や原因となる成分
生イカを含む魚介類や甲殻類には「チアミナーゼ」が多く含まれています。
チアミナーゼは、体内でブドウ糖をエネルギーに変換する過程で必要になる「ビタミンB1」を分解する働きを持ちます。
そのため、生イカの摂取で体内のビタミンB1が分解されてしまうと、ビタミンB1欠乏症となり重大な神経症状が現れます。
犬よりも猫での発症が多く報告されていますが、同様に注意が必要です。
しかしチアミナーゼは酵素のため、熱を加えると失活して無害になります。
そのため、基本的に「生」で与えないことが1番重要です。
しっかり加熱し、切れ目を十分に入れ食べやすくした状態で、少量なら体調悪化の可能性は低いとされています。
犬が食べられる魚介類一覧
魚介類は、適切に調理すれば非常に良質なタンパク源になります。 与える前は必ず加熱処理を行いましょう。 調味料や油は一切使わずに、素焼きか蒸し調理が最も安全です。 骨や皮、内臓はすべて取り除き、身の部分だけを与えるようにしてください。 特に小骨は喉に詰まらせたり、消化管を傷つける可能性もあるため注意が必要です。 基本的には総合栄養食を主食にし、時々のおやつとして1日の総カロリー摂取量の10%未満に抑えて与えるようにしましょう。
白身魚
タラ、ヒラメ、タイなどの白身魚は、脂肪分が少なく消化にも優れているため、胃腸が敏感な犬や高齢犬、回復期の犬にも向いています。これらの魚にはタンパク質のほか、ビタミンB群やリン、マグネシウムといったミネラルも含まれています。また白身魚は食物アレルギーの原因となりにくいため、アレルギー体質の犬にも比較的安心して与えられるのが特徴です。
青魚
アジ、サバ、イワシなどの青魚はオメガ3脂肪酸が豊富に含まれており、皮膚や被毛の健康維持、炎症の抑制、脳の活性化などに効果があるとされています。ただし青魚は脂質が高めのため、与えすぎには注意が必要です。
鮭
鮭は高タンパク・中脂質のバランスに優れた魚で、アスタキサンチンという強力な抗酸化物質も含まれており、免疫力の向上や老化防止効果が期待できます。
犬が食べられない魚介類一覧
犬にとって有害な成分を含んでいたり消化がしにくい魚介類は多くあります。
魚介類を与える前には必ず確認することが大切です。
タコ、エビ、カニ
イカと同様に生の食材にはチアミナーゼが含まれており、ビタミンB1を分解してしまいます。
またエビやカニなどの甲殻類は体質によってアレルギー反応を引き起こす可能性があり、消化もしにくい食材のため基本は与えない方が無難です。
貝類
多くの生の貝類も同様にチアミナーゼが含まれているため、ビタミンB1欠乏症には注意が必要です。
また、貝には食中毒の危険性や、消化不良から下痢や嘔吐を引き起こすこともあります。
加熱調理することで食べられる貝もありますが、積極的に食べることは推奨されません。
特に、アワビ、サザエ、ツブ貝、赤貝、トリ貝などは春にかけて毒性が増し、光線過敏症のリスクが高まるため絶対に与えないようにしましょう。
加工品(スルメ、干物など)
干物やスルメなどの加工された魚介類は、調理の過程で大量の塩分や調味料、保存料が使用されていることがほとんどです。
犬が食べると高血圧や脱水、心臓や腎機能への負担のリスクがあります。
また、乾燥させた加工品は非常に硬く、喉や腸に詰まると危険です。
まとめ
犬にとって、生のイカはビタミンB1欠乏症やアニサキス感染などさまざまな危険性があります。
万が一愛犬が食べてしまった場合はすぐに動物病院を受診するのが大切です。
普段から愛犬に与える魚介類についても、種類や調理方法に注意して安全な食材を選ぶように心がけましょう。