この記事ではシニア期の雄犬で気をつけたい腫瘍と関連が深い潜在精巣について解説していきます。
1.高齢の雄犬に多い潜在精巣とは?未去勢犬で起こる腫瘍との関連は?
犬の精巣は生殖で重要な役割を果たします。 胎生期に雄のホルモン(アンドロジェン)と腹圧などの因子によって腎臓周囲からお腹側に向かって移動し、陰嚢という袋に入ることが一般的な成り立ちで、基本的に雄犬で1〜2ヶ月程度で精巣を陰嚢の正常な箇所で触ることができます。 ところが、この精巣が袋に入らずお腹に残ってしまっている状態を潜在精巣と言います。
1) 潜在精巣の原因は?
犬の潜在精巣の原因は詳しくは分かっておりませんが、遺伝が関連しているのではないかと推測されています。
胎児期に精巣からの性ホルモン(アンドロジェン)の分泌が不十分であることも関連していると考えられています。
陰嚢に落ちていない精巣は多くの場合、精子を作ることができなかったり、運動性が低い精子を産生してしまうようですが、これらは精巣周囲の温度が高いことが原因と考えられています。
ただし、ホルモンの分泌が0ではないため、発情はしっかりあることが多いです。
この潜在精巣で問題なのは、精子の産生能力が低い・運動性が低いことよりも、陰嚢内に落ちている精巣と比較して腫瘍が起こりやすいことです。
精巣腫瘍の種類には精上皮腫(セミノーマ)、間細胞腫(ライディッヒ細胞腫)、セルトリ細胞腫があります。
一般的にセルトリ細胞腫の発生が多いとされています。
2) 高齢犬の潜在精巣の診断は?
潜在精巣は脂肪の中に巻き込まれてしまっていることが多いことやサイズが通常の精巣よりも小さいことから触診では診断をつけることが難しいです。
ですから、正確な診断には超音波検査が必要です。
実際には、下腹部の腎臓周囲に超音波をあて精巣の場所や形態を確認します。
3) 高齢犬の潜在精巣の治療は?
高齢犬で起こる潜在精巣の治療は陰嚢内に落ちることができなかった精巣を摘出することが最善となります。
高齢になる前に手術で対処しておくことが望ましいのですが、触診ではなかなか見つからないので、超音波検査を実施する機会に他の診断に併せてチェックしてもらうことをお勧めします。
高齢雄犬と精巣腫瘍の関連している潜在精巣について 獣医師:吉野先生の解説動画
獣医師の吉野先生による解説動画です。 ぜひご覧ください!