• 犬の研究
  • 2025/02/05

【獣医師監修】犬のしゃっくりの原因と対処法|病気など危険なしゃっくりの見分け方も解説

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「犬も人間と同じように、しゃっくりをするの?」と不思議に思う飼い主さんは少なくありません。 横隔膜がけいれんを起こすことで「ヒック」という音が出るのは、人も犬も実は同じメカニズムです。 犬のしゃっくりは多くの場合、短時間で自然に止まるため深刻な問題ではありませんが、なかには病気や体調不良が隠れているケースもあります。 本記事では、犬のしゃっくりを引き起こす主な原因を7つに分けて解説し、それぞれの対処法や動物病院を受診する判断ポイントをまとめました。 愛犬のしゃっくりが心配なとき、どのように対応すればよいのか迷う方は、ぜひ参考にしてみてください。

この記事の監修

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原因①|早食い・フードとの相性

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食欲旺盛な子犬や、食事のとき一気にフードを飲み込む犬は、空気も同時に大量に吸い込む傾向があります。 これが胃に負担をかけ、横隔膜を刺激することでしゃっくりが起こりやすくなるのです。 特に子犬はまだ上手に食べられず、食後に「ゲコッ」とか「ヒック」といった音を立てることがあります。

見分け方

しゃっくりの原因が早食いやフードとの相性であるかどうかを見分けるには、いくつかのポイントがあります。

まず、しゃっくりが食後直後にだけ発生する場合は、この原因が関係している可能性があります。

また、早食いを防ぐための工夫を行った際にしゃっくりの頻度が減少する場合も、早食いが原因であることを示唆しています。

さらに、しゃっくりに吐き気が伴う場合は、フードが合わない可能性や消化器の不調が考えられるため、注意が必要です。


止め方・対処法

  1. 早食い防止食器を使う
  2.   迷路状や突起付きの食器で、ゆっくり食べさせます。

  3. 食事回数を増やす
  4.   一度に大量に与えず、間に休憩を入れつつ小分けにして与えると胃への刺激が減ります。


病院へ行くべきタイミング

食後のしゃっくりが長時間(数時間以上)止まらない、吐き戻しや嘔吐が頻繁に起こる、食事を変えても改善が見られないなどの場合は動物病院で診察してもらいましょう。


原因②|逆くしゃみ

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逆くしゃみは、鼻から一気に空気を吸い込むような動作を短時間で繰り返す現象で、「ブーブー」「ググッ」という苦しそうな音が特徴です。 初めて見た飼い主さんは驚きますが、多くの場合は病気ではなく、生理的なものとされています。 特にパグやフレンチ・ブルドッグなど、短頭種の犬に多いです。

見分け方

たとえば、鼻腔を鳴らしながら空気を吸い込む動作を連続的に行う場合、この現象が逆くしゃみである可能性があります。

また、興奮しているときや散歩の後など、特定の状況で起こりやすい傾向があることも特徴の一つです。

さらに、安静な状態に戻ると自然に治まることが多いため、環境や状況を観察しながら原因を特定することが大切です


止め方・対処法

  1. 背中をさする、声をかける
  2.   落ち着かせることで症状が緩和されることがあります。

  3. 鼻先を短時間覆って口呼吸に切り替えさせる
  4.   ただし、犬が嫌がる場合は無理に行わないでください。

  5. 急激な運動や興奮を控える
  6.   逆くしゃみが出やすい状況を避けると、回数が減ることもあります。


病院へ行くべきタイミング

逆くしゃみが長時間続き、呼吸が困難に見える場合は、速やかに専門的な診察を受ける必要があります。

また、咳や嘔吐、鼻水といった他の症状が同時に現れる場合は、呼吸器や消化器系の異常が関与している可能性があります。

さらに、犬自身が苦しそうな様子を見せたり、パニック状態に陥っている場合には、早急に動物病院での診察を受けることが望ましいでしょう。


原因③|寝言

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犬が夢を見ているとき、口元や脚をピクピク動かすことがあります。 この体の反応がしゃっくりを引き起こすことがあります。

見分け方

この寝言による音としゃっくりを見分けるためにはいくつかのポイントがあります。

まず、眠っているときだけ「ヒック」や「クッ」といった音を発している場合は、寝言である可能性が高いです。

また、これらの音はしばらくすると自然に止まり、犬が目を覚ましているときには一切見られない場合も寝言と判断できます。


止め方・対処法

基本的に放っておいて大丈夫です。無理に起こさないようにしましょう。

大きないびきや呼吸の乱れが心配な場合は、動画を撮影して獣医師に相談してみてもよいでしょう。


病院へ行くべきタイミング

犬が目を覚ましてもしゃっくりのようなけいれんが止まらない場合、単なるしゃっくりではなく、他の深刻な問題が原因である可能性があります。

また、全身が強く硬直し、意識がもうろうとしているような状態は、てんかん発作などの神経系や筋肉の異常を示しているかもしれません。

さらに、ぐったりとして呼びかけに対する反応が薄い場合は、命に関わる緊急事態である可能性が高いです。

これらの症状が見られたら、迷わず動物病院へ連れて行くことが大切です。


原因④|極端な温度変化

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気温の変化や摂取する水・スープなどの温度差が激しいと、犬の体が驚いてしゃっくりを引き起こすことがあります。 散歩前後や屋内と屋外との寒暖差、冷たい水を一気飲みしたときなどが典型的なパターンです。

見分け方

まず、温度が急激に変化した直後にこの音が聞こえる場合は、環境の変化が影響している可能性があります。

また、冷たい水や氷を与えた際に頻繁に起こるようであれば、それが刺激となっていることが考えられます。

さらに、これらの音は多くの場合、短時間で自然におさまることが特徴です。


止め方・対処法

  1. 室温管理を適切に行う
  2.   夏はエアコンの効き過ぎに注意、冬は防寒対策をしっかり。

  3. 水や食事の温度に気を配る
  4.   冷たすぎる、熱すぎるものを与えない。

  5. 食事・水分を少しずつ与える
  6.   一気食い・一気飲みを防ぐ工夫をする。


病院へ行くべきタイミング

温度差に関係なくしゃっくりが頻発する場合は、通常のしゃっくりとは異なる原因が隠れている可能性があります。

また、吐き気や呼吸困難、元気消失といった他の症状が同時に現れる場合には、消化器や呼吸器の異常が疑われます。

さらに、犬が明らかに苦しそうな様子を見せ、それが長時間続く場合は、命に関わる緊急事態である可能性があります。

これらの兆候が見られた場合は、放置せずにすぐに動物病院で診察を受けることが大切です。


原因⑤|興奮や緊張、不安などストレス

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犬が環境の変化や激しい遊び、車に乗った際などに興奮や緊張を感じると、呼吸が乱れ、横隔膜が刺激されてしゃっくりが出ることがあります。 特に神経質な性格の犬では、この現象が起こりやすいため、注意が必要です。

見分け方

まず、来客や大きな音、初めて訪れる場所など、環境が大きく変化した際にしゃっくりが出る場合は、これが原因である可能性があります。

また、犬が落ち着きを取り戻すとすぐにしゃっくりが治まることも特徴的です。

さらに、興奮や不安のサインとして震えやそわそわした行動も同時に見られる場合は、しゃっくりがストレスや緊張によるものであると考えられます。


止め方・対処法

  1. 安心できる環境づくり
  2.   ハウスや静かな部屋を用意してあげる。

  3. 社会化トレーニング
  4.   様々な環境に少しずつ慣れさせ、状況の変化に不安を感じないようにする。

  5. 飼い主自身が落ち着いて対処
  6.   飼い主の不安が犬に伝わることもあるため、余裕をもって声をかけましょう。


病院へ行くべきタイミング

興奮や緊張が解消された後もしゃっくりが続く場合は、単なる一時的な反応ではなく、他の問題が隠れている可能性があります。

また、息が荒く、震えが止まらないなどパニック状態に陥っている場合は、犬が強いストレスや苦痛を感じている可能性が高いため、速やかに対応することが重要です。

さらに、しゃっくりに加えて食欲不振や下痢などの体調不良が併発している場合は、消化器系や全身の健康に何らかの異常が起きている可能性があります。


原因⑥|肥満

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肥満になるとお腹まわりに脂肪が付き、内臓への圧迫が強まります。 すると呼吸も浅くなりやすく、ちょっとした刺激でしゃっくりが起こることがあります。

見分け方

犬が理想体重を明らかに超えている場合は、肥満がしゃっくりや他の健康問題に影響している可能性があります。

また、触った際に肋骨を感じにくいほど脂肪が厚くついている場合も、肥満のサインです。

さらに、少し動いただけで息切れしているような様子が見られる場合は、肥満によって呼吸器や心臓に負担がかかっている可能性が考えられます。


止め方・対処法

  1. 適切な食事管理
  2.   獣医師に相談し、体重管理用フードや給餌量を調整する。

  3. 定期的な運動
  4.   無理のない散歩や遊びを続ける。

  5. ストレスをためないように
  6.   食事制限だけではなく、犬が楽しめるコミュニケーションやゲームもバランス良く取り入れる。


病院へ行くべきタイミング

肥満が原因と思われる呼吸困難やしゃっくりが長時間続く場合は、呼吸器や循環器への負担が大きくなっている可能性があります。

また、適切なダイエットを行っても体重が全く減らない場合は、ホルモンバランスの異常や他の健康問題が関与している可能性があります。

さらに、呼吸が荒くなる、疲れやすいなど、呼吸器や心臓の異常が疑われる場合には、早急に診察を受けて原因を特定し、適切な治療を始めることが大切です。


関連記事:犬の負担が少ないダイエット方法|継続重視の減量で無理なく肥満解消!

原因⑦|病気

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犬のしゃっくりが一時的なものではなく病気の可能性も考慮することが重要です。 呼吸器系では気管支炎や肺炎、気管虚脱が原因となることがあり、咳や呼吸困難を伴う場合があります。 心臓病の場合もしゃっくり様の症状に加え、息苦しさや咳が見られることがあります。 また、胃捻転や逆流性食道炎、食道炎などの消化器系疾患でも同様の症状が現れる場合があり、早急な対応が必要です。

見分け方

しゃっくりが長時間止まらない、あるいは頻繁に繰り返される場合や、咳、嘔吐、下痢、体重減少といった他の症状を伴う場合には注意が必要です。

また、動きを嫌がったり、痛がる様子を見せたり、ぐったりしている場合も早急な診察が求められます。

しゃっくりは、咳や嘔吐と混同されやすい症状です。

咳は「ゴホゴホ」と喉を詰まらせるような仕草が特徴で、嘔吐は腹部が強く収縮し、内容物を吐き出します。

軽度の症状に見えても、重篤な病気の前兆の可能性があります。

自己判断は危険なので、動画撮影をして獣医師に相談すると早期発見・早期治療に繋がります。

まとめ

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犬のしゃっくりは多くの場合、短時間で自然に治まり、病気とは無関係です。 しかし、次のような「異常なしゃっくり」を見かけたら要注意です。

動物病院へ連れていくべき「異常なしゃっくり」

  1. 数時間以上続く、または頻繁に起こる
  2. 吐き気や嘔吐、呼吸困難を伴う
  3. ぐったりして元気がない、食欲低下が著しい
  4. 咳や鼻水など他の症状を併発
  5. 体重が急に増えたり減ったり、体調に大きな変化がある

愛犬のしゃっくりの原因を正しく見極め、必要に応じて早めに動物病院へ相談することが大切です。

飼い主さん自身が「これは大丈夫」と自信をもって判断できるように、日頃から愛犬の食事や生活習慣、しぐさや体調の小さな変化を見逃さないよう心がけましょう。

万が一の際は、スマホなどで動画を撮影しておくと診断に役立ちます。

何事も「早期受診・早期治療」が愛犬の健康と長寿につながりますので、気になる症状があれば、迷わず獣医師に相談してください。

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獣医師 茂木千恵

東京大学大学院農学生命科学科獣医学博士課程卒。獣医師。博士(獣医学)。 アニマルCBD研究会代表獣医師。藤田医科大学医学部客員講師。日本臨床カンナビノイド学会登録医。 (株)モンパニエ・動物臨床行動学研究室主宰。エバーグリーンペットクリニック恵比寿行動科担当医。 日本獣医学会、日本獣医行動研究会、日本補完代替医療学会所属。 辰巳出版雑誌Shi-ba、プードルスタイル等監修。猫にいいこと大全、動物行動学+猫マンガ ニャン学、マンガ動物行動学 犬の気持ちとしぐさがよくわかる!(本;いずれも主婦の友社)監修。 犬と猫の問題行動を対象とした執筆、研究教育活動を行う。 また、ペットの飼い主を対象とした行動学等の講演活動も行っている。 日本テレビ「天才!志村どうぶつ園」、「1周回って知らない話」出演、テレビ朝日「林修の今でしょ!講座」監修、MBS、テレビ東京等番組出演・監修多数。

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