秋の散歩道でよく見かける銀杏。 犬にとっては命に関わる危険な存在であることをご存じでしょうか? うっかり拾い食いをしてしまった場合、中毒症状を引き起こすリスクがあります。 本記事では、銀杏を食べたとき起こる症状や、緊急時の応急処置、さらに犬が安全に食べられる・食べられない「種子」まで幅広く解説します。 大切な愛犬を守るために、ぜひ最後までお読みください。
犬が「銀杏」を食べてしまったら命にかかわるの?
人にとっては秋の味覚のひとつである銀杏ですが、犬にとっては非常に危険なものです。 銀杏には神経系に作用する有害成分が含まれており、体の小さな犬ではごく少量でも深刻な中毒症状を引き起こす可能性があります。 実際にたった数粒の銀杏を食べただけで、けいれんや意識障害を起こした例が確認されています。 症状が進行すると命に関わるケースもあるため、注意が必要です。
もし「銀杏」を食べてしまったらどんな症状がでるの?危険な症状とは?
犬が銀杏を食べてしまった場合、少量でも中毒症状を引き起こすことがあります。
銀杏に含まれるメチルピリドキシンは主に神経に作用するとされており、痙攣、震え、ふらつき、意識障害、さらには起立不能といった神経症状が現れることがあります。
また、神経系以外にも嘔吐や下痢など消化器症状を伴うこともあります。
出典:銀杏中毒を疑った犬の1例 小動物臨床関連部門 藤 将大, 有田 汐紗, 太田 貴子, 冨永 博英, 平川 篤, 杉山 伸樹
危険な症状の場合の応急処置
けいれんや意識障害、起立不能などの重い症状が見られる場合は、すぐに動物病院へ連絡し、できる限り早く受診することが大切です。無理に口を開けたり吐かせたりしないようにせず、すぐに動物病院に連れていきましょう。銀杏中毒の場合は時間との勝負になるため、「少し様子を見よう」という判断が取り返しのつかない事態を招くこともあります。動物病院では中毒治療としてビタミンB6や抗けいれん薬の投与、点滴などが行われます。
軽度な症状は?
軽度な銀杏中毒の症状として、食後数時間以内に嘔吐や軽度の下痢、よだれの増加から、眠そうな様子、歩行時のふらつきといった症状が見られる可能性があります。
銀杏を食べた後にそのような症状が見られる場合は、中毒の可能性を考えましょう。
軽度な症状の場合の応急処置
軽度の中毒症状が出た場合でも自己判断で対処せず、すぐに動物病院に相談することが大切です。
食べた量、銀杏の状態(加熱の有無・殻の有無)、食べてからの経過時間などを整理して、正確に報告しましょう。
吐いた物や食べ残しの銀杏は捨てず、動物病院へ持参することで診断の手がかりになります。
自己流で塩水を飲ませたり、吐かせたりするのはかえって危険です。
動物病院で適切な処置を受けることが愛犬の命を守る最良の方法です
食べて時間が経ってから症状が発生することがあるため要注意
銀杏中毒はすぐに症状が出るとは限りません。
愛犬の体格や体質、年齢などで症状の発現には差が出ます。そのため、愛犬が銀杏を食べてしまった後、最初の数時間に異常がなくても、食べた時点で危険と判断するべきです。
夜間に食べてしまった場合、翌朝になってから急変することもあるため、万一の事態に備え、夜間救急病院の情報を事前に確認しておくと、緊急時にも迅速な対応が可能になります。
「銀杏」を食べてはいけない理由や原因となる成分
銀杏で問題となる成分は複数ありますが、最も問題となるのが「メチルピリドキシン(別名ギンコトキシン)」です。
この成分は、ビタミンB6の働きを妨害し、神経伝達物質の合成を阻害する作用があります。
その結果、神経過敏やけいれんを起こしやすくなり、重篤な場合は意識障害にまで至ります。
また、外側の柔らかい果肉部分(外種皮)に含まれる成分も炎症を起こす可能性があるとされています。
中毒以外にも、銀杏を丸呑みすることで腸閉塞の原因にもなりえます
銀杏は「食べても、触れても」危険な存在です。
犬が食べられる種子一覧
食べても安全な種子は、与え方や量を正しく把握すれば健康的なおやつになります。
ただし、おやつの量は1日の総カロリーの10%以内に抑え、愛犬の体調に合わせて組み合わせるのが重要です。
出典:Feeding Treats to Your Dog - WSAVA
AMERICAN KENNEL CLUB
かぼちゃの種
かぼちゃの種は、正しく下処理をすれば安全な種子の一つです。
皮膚や被毛の健康に役立つオメガ3脂肪酸、免疫力を高める亜鉛、抗酸化作用を持つビタミンEが豊富に含まれています。
生のままでは硬い殻が消化されずに喉や腸で詰まる危険があるため、必ず殻をむいてから与えましょう。
無塩・無油のものを使用して軽くローストし、細かく刻むか粉末状にして与えると消化吸収が良くなります。
体重5kgの犬で1〜2粒までが目安です。
脂質が多いため持病のある子や肥満気味の場合は獣医師に相談の上与えるようにしましょう。
ひまわりの種
ひまわりの種も無塩・無味であれば犬が少量食べられる種子です。
ビタミンE、セレン、マグネシウムといった栄養素を多く含み、抗酸化作用や心血管系の健康サポートが期待できます。
与える際は硬い殻を必ず取り除き、中の種だけを与えます。
生のままより軽くローストした方が香りが出て嗜好性が高まります。
与える量は体重5kgの犬で1〜2粒程度としましょう。
それ以上与えると高脂肪による下痢や嘔吐、肥満や膵炎のリスクが高まります。
ごま
ごまは白ごま、黒ごま、金ごまのいずれも少量なら犬に安全に与えられます。
カルシウムや鉄分、食物繊維、抗酸化物質セサミンを含み、骨や歯の健康維持や老化防止に役立ちます。
しかし、ごまの硬い外皮はそのままだと消化吸収が難しいため、必ずすりごまにしてから与えましょう。
体重5kgの犬で小さじ1/4程度が目安です。
ごまは香りが強く嗜好性が高いため、フードに少量混ぜると食欲が落ちた犬の補助にもなりますが、持病のある子は獣医師と相談してから与えるのが安心です。
犬が食べられない種子一覧
一見すると健康によさそうな種子でも、犬にとっては毒性を持つものや少量でも命に関わるものがあります。
人間が日常的に食べるナッツや種子類の中にも危険なものが多く含まれるため、その特徴とリスクをしっかり理解しておきましょう。
マカダミアナッツ
マカダミアナッツも犬にとって危険な食べ物です。
原因成分は特定されていませんが、マカダミアナッツに含まれる脂質が神経や膵臓へ影響を与える可能性が指摘されています。
少量でも中毒を起こすリスクがあり、虚弱やふらつき、嘔吐などを引き起こすため、絶対に与えてはいけません。
ピスタチオ
ピスタチオは高脂肪・高カロリーで、犬に与えると様々な臓器へのリスクが高い可能性があります。
また、ピスタチオはリンやカリウムというミネラルを豊富に含むため、過剰摂取になると消化不良から胃腸炎になったり、膵臓や肝臓に負担がかかってしまいます。
あえて与える必要はないため、基本的には推奨されません。
クルミ(砕いていない、古いもの)
クルミは中毒物質などは含まれていないため、少量であれば健康に悪影響を与える可能性は低いとされています。
しかし、古いクルミに生えたカビ(マイコトキシン)による中毒を発症すると嘔吐、ふらつき、けいれん、食欲不振などの症状が現れることがあります。
また、クルミのような大きな種子は犬の消化管に詰まりやすく、丸呑みしてしまうと命に関わる場合もあります。
脂質も高く、与える際には十分な注意が必要です。
チョコレートコーティングされた種子
チョコレートコーティングされた種子類は、チョコレートに含まれるテオブロミンが犬に強い毒性を持ち、嘔吐、下痢、不整脈、けいれん、最悪の場合は死亡する危険があります。
テオブロミンは犬が代謝できないため体内に蓄積しやすく、少量でも命に関わる可能性があります。
チョコレート付きのマカダミアナッツは二重の危険を持つため特に与えてはいけません。
まとめ
銀杏は危険な食べ物です。 万が一食べてしまった場合は症状が出ないからといって安心せず、必ず動物病院に相談しましょう。 秋の散歩中に落ちている銀杏を、愛犬が拾い食いしないよう気をつけることも重要です。 正しい知識と事前の備えで、愛犬と楽しく秋を過ごせるといいですね。