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  • 2025/08/12

獣医師が教える 犬が「ネギ類」を食べたときの症状と応急処置

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キッチンで愛犬がおすそ分けを待っていると、ついついあげたくなるものですね。 でも、ネギや玉ねぎ、ニラ、ニンニク、ラッキョウ、エシャロットなどのネギ類は、犬にとって少量でも危険な食材です。 人には栄養豊富な野菜でも、犬には命を脅かす中毒の原因になることをご存じでしょうか? この記事では、犬にネギ類を与えてはいけない理由から誤植してしまった時の対処法、与えても大丈夫な野菜の紹介まで幅広く解説します。 ポイントを押さえて大事な愛犬を危険から守りましょう。

この記事の監修

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「ネギ」を食べてしまったら命にかかわるの?

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ネギはもちろん、玉ねぎ、ニラ、ニンニク、ラッキョウ、エシャロットなどのネギ類は、犬にとって非常に危険な食材です。 これらには有機硫黄化合物が含まれ、犬の赤血球を破壊して、命にかかわる溶血性貧血を引き起こします。 特に体重の軽い小型犬や日本犬(柴犬、秋田犬など)は感受性が高いとされ、少量でも症状が出ることがあります。 中毒量は犬の体重1kgあたり約5〜10gとされ、小型犬ではほんの一口でも危険です。

出典:ペット栄養学会誌, 26(2), 2023「与えてはいけない食べ物その1:ネギ類(Allium spp.)植物」

出典:J-STAGE学術論文:「玉葱の給与による犬の急性溶血性貧血性の発症例」

出典:公益社団法人静岡県獣医師会HP「ペットにとって危険な食べ物とは・・・?」


もし「ネギ」を食べてしまったらどんな症状がでるの?危険な症状とは?

ネギや玉ねぎ、ニラ、ニンニク、ラッキョウ、エシャロットなどのネギ類を摂取した犬は、早ければ数時間後から嘔吐、下痢、元気消失などの症状が現れます。

重症化すると血尿や黄疸、呼吸困難、ふらつきが見られ、急性の溶血性貧血に陥り、命に関わることもあります。

そのため見た目に変化がなくても、これらの食品を食べた疑いがあれば、症状の有無に関わらず速やかに動物病院を受診することが重要です。

  • 元気喪失、食欲不振
  • 嘔吐・下痢
  • 赤黒い血尿(ヘモグロビン尿)
  • 歯茎や舌の蒼白化(貧血のサイン)
  • 黄疸、ふらつき、呼吸困難

症状は様々ですが、なかでも赤黒い尿や黄疸、ふらつきは重度のサインで、命の危険があります。すぐに緊急での医療処置が必要です。


危険な症状の場合の応急処置

ネギを摂取後に赤黒い尿やぐったりとした症状がある場合、すぐに動物病院に連絡し、直行してください。

特にネギを食べた量・愛犬の体重・食べた時間を正確に伝えることが重要です。

獣医師による催吐処置(薬を使用してネギを吐かせる処置)や胃洗浄(胃の中のネギを洗い出す処置)、点滴や貧血が重度の場合は輸血などが必要となる場合があります。

家庭で無理に吐かせるのは誤嚥の危険があるため絶対にやめましょう。


軽度な症状は?

ごく少量を摂取しただけでは、症状が出ないこともあります。

しかし油断は禁物です。

一見いつも通り元気に見えても、血液検査で異常が見つかることもあるため、わずかな量でも誤食してしまった場合は、獣医師に必ず相談してください。


軽度な症状の場合の応急処置

まだ症状が出ていない、あるいは軽度である場合でも早めの診察が重要です。

必要に応じて催吐処置や活性炭を投与したり(炭が毒を吸着して排泄させる)、抗酸化物質(ビタミンCやE)を含んだ点滴が行われます。


食べて時間が経ってから症状が発生することがあるため要注意

ネギ中毒の症状は、食後すぐに出るとは限りません。

食べてから24〜72時間後、もしくはそれ以上経ってから症状が現れるケースもあります。

見た目に異常がなくても油断せず、摂取が確認された時点で動物病院に連絡し、数日間は慎重に愛犬の様子を観察しましょう。

「ネギ」を食べてはいけない理由や原因となる成分

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ネギ類(玉ねぎ、ニラ、ニンニク、ラッキョウ、エシャロット)に共通して含まれるのが、有機硫黄化合物(アリルプロピルジスルフィドなど)です。 これらは犬の赤血球中のヘモグロビンを酸化させ、「ハインツ小体」という異常構造を形成します。 その結果、赤血球が壊されて溶血が起こり、全身の酸素供給が不足します。 ネギは加熱や調理をしても毒性がなくならないため、出汁やスープ、粉末調味料でも中毒が起こります。 特に犬は人間より代謝能力が低いため、注意が必要です。

犬が食べられる野菜一覧

家庭犬は元々、ドッグフードである総合栄養食のみで1日に必要な栄養素を全て補うことができます。

そのため、普段のご飯をメインに与え野菜はおやつとして少量与える程度にとどめましょう。

おやつの量は1日に与える総カロリーの10%に抑えることが推奨されています。


出典:Feeding Treats to Your Dog - WSAVA

出典:AMERICAN KENNEL CLUB



にんじん

にんじんはβカロテン(ビタミンA)を豊富に含み、皮膚や視力の健康維持、免疫力の向上に役立ちます。

アクが強いため、軽く加熱して柔らかくしてから与えるのがベスト。

硬いまま与えると喉に詰まる恐れもあるため、細かく切って1日小さじ1〜2杯程度までを目安にしてください。


カボチャ

かぼちゃはビタミンE、βカロテン、食物繊維が豊富で、胃腸の調子を整える効果も期待できます。

蒸して皮と種を除き、裏ごしするか細かく切って与えましょう。

糖質が高いため、肥満や糖尿病のある犬には控えめに。与える量は小さじ1〜2杯程度が目安です。


さつまいも

エネルギー補給と便通改善に優れた食材ですが、糖分が高く与えすぎには注意が必要です。

加熱して柔らかくし、潰した状態で与えます。

皮は消化しづらいため取り除くのが安全です。

小型犬なら小さじ1杯、大型犬でも大さじ1杯以内に留めると安心です。


きゅうり

水分が多くカロリーが低いため、暑い季節の水分補給やおやつ代わりに適しています。

ただし冷えたまま与えると下痢の原因になるため、常温に戻して輪切り1〜2枚までが理想的。

食物繊維が多く、胃腸が弱い犬には慎重に与えた方が良いでしょう。


ブロッコリー

抗酸化成分やビタミンC、食物繊維が豊富で、免疫力強化に効果が期待されます。

ただし過剰摂取は胃腸に負担をかけ、吐き気や下痢を招く可能性も。

必ず加熱して細かく刻み、房を1〜2個程度までに抑えましょう。

芯や茎は消化不良の原因になるため避けてください。


犬が食べられない野菜一覧

犬が注意するべき野菜は、ネギ類以外にも豊富にあります。

それぞれの野菜や果物を与える際は、安全性を調べた上で正しい方法で与えるように気をつけましょう。

以下の野菜・果物は特に犬にとって注意が必要な食材です。


ジャガイモの芽や緑色の皮

じゃがいもの芽や緑色の皮、未熟な部分には「ソラニン」という天然の毒素が含まれており、犬にとって有害です。

ソラニンを摂取すると、嘔吐、下痢、ふらつき、心拍の乱れ、神経症状などが現れる可能性があります。

加熱調理されたじゃがいもの果肉部分は少量であれば問題ありませんが、芽や皮は完全に取り除き、加熱してから与える必要があります。


トマトの葉・茎・未熟な実

熟したトマトの果実は少量なら安全とされていますが、葉・茎・未熟な緑色のトマトには「トマチン」や「ソラニン」といった毒素が含まれています。

これらは犬の神経系や消化器に影響を与え、よだれ、嘔吐、下痢、けいれんなどの症状を引き起こす場合があります。

家庭菜園などで栽培している場合は、誤食を防ぐよう注意しましょう。


ニラ

ネギ属の野菜で、玉ねぎやネギと同様に赤血球破壊の原因物質を含みます。

食べると嘔吐、下痢、元気消失、血尿などを起こし、重度の場合は命に関わることも。

加熱しても無毒化されないため、スープや炒め物も要注意です。絶対に与えてはいけません。


ニンニク

人間には健康食品として知られていますが、犬にとっては非常に危険。わずか数gでも胃腸障害、貧血、呼吸困難などを引き起こすことがあります。

ニンニクの粉末やガーリック入りのサプリ、味付けにも注意が必要です。中毒事例の多い食品の一つです。


アボカド

アボカドに含まれる「ペルシン」は、犬の心臓や肝臓に悪影響を及ぼす毒性成分です。

果肉だけでなく、皮・種・葉にも含まれています。

摂取により嘔吐、下痢、呼吸困難、むくみなどが現れることがあり、特に小型犬は重症化しやすいため注意が必要です。


ブドウ・レーズン

確な毒性物質は未解明ですが、ごく少量(3〜5粒)でも腎不全を引き起こすことがあり、死亡例も報告されています。

レーズンやぶどうパンなども危険で、摂取後数時間〜数日で急性腎障害が進行します。

安全量は存在しないため完全禁止とされています。


出典:ASPCA – Toxic Foods for Dogs

出典:環境省 飼い主のための ペットフード・ガイドライン



まとめ

ネギは犬にとって「少量でも命にかかわる」危険な食材です。

たとえ加熱調理していても、エキスだけでも有害となる可能性があります。

特に日本犬や小型犬は感受性が高く、誤食によって急性の貧血や命にかかわる合併症を引き起こすこともあります。

  • ネギ類を使った料理は一切与えない
  • 誤食が疑われるときは、動物病院を受診
  • 家族全員での情報共有を徹底しよう

愛犬の健康を守るために「人間には安全でも、犬には危険!」という考えを常に忘れず、愛犬と安心・安全に暮らしていきたいですね。

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獣医師 原田瑠菜

獣医師、ライター。 大学卒業後、畜産系組合に入職し乳牛の診療に携わる。 その後は動物病院で犬や猫を中心とした診療業務に従事。 現在は動物病院で働く傍ら、ライターとしてペット系記事を中心に執筆や監修をおこなっている。

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